請負契約と派遣契約との違い。偽装請負とは、何か?

 

前回、「業務委託契約と雇用契約の違い。労働者性の判断基準とは?」において、実質的に雇用契約とみなされるか否かを判断する基準として「労働基準法研究会報告「労働基準法の「労働者」の判断基準について」(昭和60年12月)」をご紹介しました。

雇用契約の場合、労働者に関する指揮命令に関する権限は、雇い主に存在します。そのため、業務委託契約や請負契約と契約書の表題や条項において記載があっても、勤務実態の上で指揮命令系統がいわゆる雇い主にある場合は、雇用契約とみなされる可能性が大きいです。

こうなると、当然の事ながらいわゆる雇い主に関して労働基準法その他の労働関係法令における適用や社会保険の加入義務が課せられます。

さて、指揮命令に関する権限が雇い主側にない請負契約のデメリットとしては、「業務委託契約と、その利用に係る企業側のメリット、デメリットは?」で記載しましたが、以下のようになります。

 

業務委託契約を利用する上でのデメリットは、「仕事の進行に関する裁量権」が受託者側に存在するため、自社の社員のように指揮命令を行うことができず、仕事に関して受託者に依存してしまいがちになることです。また、情報漏えいを防止や品質の維持に関する対策が、自社の労働者を使用する場合に比べて難しくなる場合が往々に存在します。委託先は、指揮命令権限が受託先の労働者に対しない以上、細かな仕事のチェックが必然的にやりづらくなります。

 

そのことから、必然的に「仕事を出す側の指揮命令権限のもとで、他の雇い主のもとで雇用契約をした労働者を使用することはできないか?」という社会的需要が発生することは当然です。

労働者保護の観点からすると、いささか、都合のいい要求のように感じる方もいらっしゃると思います。当然、何も規制のないままこの要求を放置すると、人工貸し等の職安法で禁止する労働者供給事業に該当してしまいます。

 

何が問題になるのかについては、民法第632条の請負と職安法第44条が禁止する労働者供給事業についての関係性を考えることがいいと思います。
判断基準としては、仕事の完成を請負ことに該当する業務を職安法施行規則第4条1項に規定する「独立して行うべき行為」が請負業で、それ以外が労働者供給事業と云うことになります。
この「独立して行うべき行為」が請負業者の事業者としての事業者性の判断基準の大きなポイントになります。
さて、労働基準法第6条により、労働者に対する「中間搾取の排除」が定められています。
条文の内容は、「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。」とあります。
前述の職安法施行規則第4条1項に規定により、労働者供給事業と判断されるものは、労働基準法上の「業として他人の就業に介入して利益を得る者」に該当し、違法行為になります。
ちなみに、職安法第44条が禁止する労働者供給事業を行うと、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」となります。

 

労働基準法やその他の労働関係法令により保護されない労働者的立場の者を発生させる事は、苦役者をつくることになり当然に犯罪行為となります。

ただし、現実的な労働市場の要求を鑑みて、一定の規制のもとこれを開放することにより、円滑な社会運営を目指すことは建設的なことと考えられています。

ここで、この社会的要請を満たすために発生されたものが「労働者派遣契約」になります。本日は、この契約形態と請負の関係性、偽装請負とは何か?について、解説をしたいと思います。

 

派遣契約との関係性

 

労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいう。ただし、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするもの(いわゆる出向)は労働者派遣に含まれない(労働者派遣法第2条1号)。

 

労働者派遣においては、労働者が派遣先の指揮命令に服して労働に従事します。当然、派遣先には労働者派遣法上の規制を遵守することはもちろん、派遣業の許可を事前に取得した派遣元から労働者の供給を受けることになります。

 

派遣契約

 

対して、請負の場合は、注文者の指揮命令に服さず独自の裁量のもと仕事を行うことになります。

 

 

※ 業務委託契約における委任・準委任も基本的に請負同様に仕事の進行に関する裁量権があるため、委託先の指揮命令に服しません。

さて、請負や業務委託などの契約名称の如何に関わらず、請負企業側が指揮命令を行わず、当該請負企業に雇用される労働者が請負業務遂行のため発注企業の事業所に赴き、発注企業の指揮命令に服している実態があれば偽装請負(業務処理請負)に該当する可能性が高いといえます。

偽装請負が上記の労働者派遣法第2条1項に該当し、かつ、派遣事業の許可を受けていない場合(労働者派遣法第5条1項)、労働者派遣を行っている側は罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金など)により処罰される可能性があります。

また、労働者派遣を受けている側も労働者派遣法が定める義務に違反するものとして罰則により処罰される場合があるほか、派遣業の許可を受けていない者から労働者派遣を受け入れることとして(労働者派遣法第24条の2)、行政指導、改善命令、勧告、企業名公表がなされる場合が在ります。

派遣と請負を区別する基準としては、以下のように定められています。

 

・ 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示、最終改正平成24年厚生労働省告示第518号)

請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であっても、当該事業主が当該業務の処理に関し次のいずれかにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
一 次のイ、ロおよびハのいずれのも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者の始業および終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を自ら行うこと。
(2) 労働者の労働時間を延長する場合または労働者を休日に労働させる場合における指示その他管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く)を自ら行うこと。
ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者の服務上の規律に関する事項について指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の配置等の決定および変更を自ら行うこと。
二 次のイ、ロおよびハのいずれにも該当することにより請負契約により請負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任のもとに調達し、かつ、支弁すること。
ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ 次のいずれかに該当するものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備もしくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く)または材料もしくは資材により、業務を処理すること。
(2) 自ら行う企画または自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づいて、業務を処理すること。

※ 各都道府県の労働局においては、基本的にこれに従った指導が行われています。

 

まとめとして

 

たとえ、請負契約という契約の形式をとっても、事業主の業務処理に関して以下のすべてを満たすものを除いて、労働者派遣事業を行う事業主とされます。そのため、労働者派遣事業の許可を取得せず行ったっ場合は、罰則により処罰されます。また、無許可の労働者派遣事業を行う事業主から労働者の供給を受けた者も、同じく処罰されます。

 

自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
請負った業務を自己の業務として、契約の相手方から独立して処理するものであること。

 

偽装請負・違法派遣については、世の中の景気が悪化した際に往々に発生する社会問題です。上記に説明した職安法違反の労働者供給事業者は、事業として行う場合に非常に安易に行うことが可能です。

極論をいえば、人集めさえできれば事業が成り立つため、しばしば反社会的勢力の安易な収入源となっていました。

代表的なものに以前存在したドヤ街による日雇い労働者集めとその供給があります。状況はかなり改善されたとはいえ、大きな駅の近くでは朝方に稀にこのような光景を目撃します。

私の立場で次のようなことをいうのは不適切かもしれませんが、就業困難な中高年はアルバイトすら探すのが困難なケースがあります。見てみぬふりはとまではいいませんが、ある程度ほっておく世界も必要な気がします。